インターネット上のレビューや口コミは、企業の信用や売上に直結する時代です。しかし、実際にはサービスを利用していない人が投稿した「嘘のレビュー」や「虚偽の体験談」も数多く存在し、それが企業に深刻な損害を与えるケースも増えています。本記事では、実在しないレビューや虚偽投稿がどのような影響を及ぼすのか、そして企業としてどのように防ぎ、対処していくべきかを具体的に解説します。
嘘のレビューが検索結果に残ることで起こる風評被害
インターネット上のレビューや口コミは、企業の信頼性を判断する重要な材料として、消費者の間で定着しています。検索エンジンで企業名を入力すれば、口コミサイトやレビュー投稿が上位に表示され、それが“企業の印象”として受け取られるのが一般的です。しかし、そうしたレビューの中に、実際にはその企業のサービスを利用していない人による「嘘のレビュー」が混じっていた場合、その影響は計り知れません。
たとえば、架空の体験談として「電話対応が最悪だった」「支払いをしたのに商品が届かなかった」などと投稿された場合、閲覧者はそれを真に受けてしまう可能性が高くなります。検索結果に表示される情報は“第三者の声”として強い説得力を持ってしまうため、たとえ虚偽であっても、それが真実のように受け止められてしまうのです。
このような虚偽レビューが検索上位に定着すると、新規顧客の流入が止まるだけでなく、既存の顧客からの信頼も揺らぎ、問い合わせや受注の減少、キャンセルの増加といった現実的な損害へとつながります。さらに、口コミ内容がまとめサイトやSNSで拡散されれば、検索結果の1ページ目が悪評で埋め尽くされる事態にもなりかねません。
検索エンジンは内容の正確性を判断せず、「人気」や「アクセス数」で表示順位を決めるため、扇情的な内容の虚偽レビューほど表示されやすいという問題もあります。つまり、真実かどうかにかかわらず、“目立つ”レビューが企業イメージを大きく左右してしまうというのが、今のネット社会の現実なのです。
利用者を装った虚偽投稿がもたらす信用低下と売上減少
虚偽のレビューの中でも特に深刻なのが、あたかも利用者であるかのように装って投稿される「体験談風の嘘」です。「◯◯という会社に依頼したが、スタッフの態度が横柄だった」「頼んだサービスが一切実行されなかった」など、具体的かつリアルに見える表現を用いた投稿は、その真偽を見抜くのが難しく、閲覧者に強い悪印象を与えます。
こうした虚偽の投稿は、企業の信用を大きく傷つける要因となります。検索結果のレビュー欄に悪評が目立てば、利用を検討していた顧客は他社を選ぶ可能性が高まり、問い合わせ件数の減少や予約キャンセル、来店率の低下など、直接的な売上減少へとつながっていきます。
また、採用活動にも影響を及ぼすことがあります。企業名を検索したときに悪い口コミが目に入ると、求職者が応募をためらったり、内定辞退につながるケースも多く見受けられます。企業の成長にとって人材確保は極めて重要な要素ですが、その足元を口コミがすくってしまうのです。
さらに、社内においても悪影響が生じます。虚偽のレビューが社員の士気を下げ、「自分たちの努力が無駄にされている」と感じさせてしまうことで、モチベーションの低下や離職率の上昇を招くケースもあります。
つまり、たった一件の嘘のレビューが、外部だけでなく内部にも悪影響を及ぼす「信用の連鎖崩壊」を引き起こす危険性があるということです。
競合による悪質なレビュー操作のリスクと事例
実在しないレビューが投稿される原因の一つとして、競合企業による“レビュー操作”の可能性も指摘されています。匿名性が高く、誰でも自由に投稿できる口コミサイトでは、実際にその企業のサービスを利用していない第三者が悪評を書き込むことが容易であり、意図的に企業のイメージを貶める行為が行われることもあります。
このような行為は明確な不正競争行為や名誉毀損にあたりますが、証拠の特定が難しく、被害者である企業が対抗手段を取るには時間とコストがかかるのが実情です。さらに、投稿者がVPNを使っていたり、海外サーバーを経由していたりする場合、発信者の特定が困難となり、泣き寝入りを余儀なくされるケースもあります。
過去には、特定の地域で人気を集めていた飲食店が、同業他社によって口コミサイトで「不衛生」「店員が暴言を吐いた」といった虚偽レビューを大量に書き込まれ、来店客が激減し、最終的に閉店に追い込まれたという実例も報告されています。サービス業だけでなく、士業、医療、美容、教育などの業種でも同様の被害が相次いでいます。
このような悪意ある行為が蔓延すれば、健全な競争や市場の信頼性そのものが損なわれることになります。企業はこうしたリスクに備え、万が一に備えた「証拠保全」や「削除申請手順」の整備など、日頃から準備を怠らない姿勢が求められます。
虚偽レビューから企業を守るための実践的な対策とは
実在しないレビューや嘘の投稿から企業を守るためには、受け身ではなく“積極的な情報管理”が欠かせません。まず重要なのは、日常的な口コミ監視です。定期的に自社名で検索を行い、表示されるレビューや関連ページの内容をチェックすることで、問題のある投稿を早期に発見できます。
虚偽のレビューを確認した場合、まずはスクリーンショットや掲載日時、投稿者情報(可能な範囲)などを記録し、証拠を保全しておきましょう。その上で、口コミサイトの運営会社に対してガイドライン違反を理由に削除申請を行います。多くの口コミサイトには通報フォームや削除依頼窓口が用意されています。
削除に応じてもらえない場合や、悪質な投稿が継続する場合には、弁護士を通じて発信者情報の開示請求や、名誉毀損に基づく損害賠償請求といった法的手段を検討することも視野に入れましょう。
加えて、ネガティブなレビューを上回る“良質な情報”を意図的に増やす取り組みも重要です。公式サイトでの事例紹介やブログ更新、SNSでの活動報告など、企業の姿勢や実績を示すポジティブなコンテンツを継続的に発信することで、検索結果の印象を改善できます。
また、満足度の高い顧客に対してレビュー投稿を促す仕組みも効果的です。誠実なレビューが自然に集まるように工夫すれば、虚偽の投稿が目立ちにくくなると同時に、信頼のある評価が積み重なっていきます。
企業の信用は“見られた情報”によって左右される時代だからこそ、虚偽投稿に対しては「無視せず、丁寧に、継続的に」対応していくことが求められます。
まとめ
実在しないレビューや嘘の投稿は、たった1件であっても企業に深刻なダメージを与えかねない危険な存在です。検索結果に表示された虚偽の情報は、ユーザーに強い第一印象を与え、売上や採用、ブランド価値にまで影響を及ぼします。しかもその多くは匿名で投稿され、削除や反論が難しいのが現実です。だからこそ、企業は定期的なモニタリングと、情報発信による印象改善、必要に応じた法的対応など、総合的な対策を講じていくことが必要です。ネット上の信頼を守るには、情報の「質」だけでなく「見せ方」と「管理」が重要なのです。